誰もが知っているイギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピア。彼の晩年を題材にした映画『シェイクスピアの庭』は質の高い演技が見られる映画です。
2019年から約950本の映画を観た中で、出演者全員・作品全体で演技が一番だと感じる作品だからです。
・演技に興味がある
・スタニスラフスキーに興味がある
・他の映画との違いが気になる
なぜ質の高い映画なのか、どうやって見るのか。例を挙げて作品の魅力をお伝えします。
質の高い『芝居』を楽しむ舞台に近い映画作品
「ブルータス、お前もか」『ジュリアス・シーザー』
「ロミオ、なぜあなたはロミオなの」『ロミオとジュリエット』
などで有名な劇作家・俳優のウィリアム・シェイクスピアがロンドンから家族のもとへ帰郷した3年を描いています。
イングランドの劇作家、詩人であり、イギリス・ルネサンス演劇を代表する人物でもある。卓越した人間観察眼からなる内面の心理描写により、もっとも優れた英文学の作家とも言われている。また彼の残した膨大な著作は、初期近代英語の実態を知るうえでの貴重な言語学的資料ともなっている。
Wikipediaより引用
家族と離れている間にできた心の溝を埋める、と言った大きな事件は起きない物語です。
シェイクスピアの本ように意思や感情を直接表現せず、詩のような言い回しをするので「意味わかんない」に陥りがちです。
しかし、俳優のある部分を見ると、セリフの意味や人物の微細な感情の変化を感じることができ、作品の理解に繋がります。
目から『内的行動』を読み取ると意味がわかる
内的行動とは普段誰しもが無意識で行なっています。
多くの人が当たり前のように歩いていますが、左足と右足を交互に前に伸ばし、踵をつき重心を乗せて爪先で蹴り出す力で前に進む…なんて意識していませんよね。
同じようなことがコミュニケーションでも行われています。
例:ペットや言語が違う人とコミュニケーションをとるとき。
『相手の目を見る』これは目視でわかる動作です。これを外的行動と呼びます。それに対して、内面で起こっていることが内的行動です。
何を言われたか見当がつかないので「過去の経験と照らし合わせる」「前後の予定から予測している」「探っている」
例:上司や先生の話を聞いているとき。
『うなずく』=外的行動
「この後何食べようかなぁと考える」「気に入られようとアピールしている」「賛同の意を伝える」=内的行動
動作で判断できる外的行動に対し、内的な行動は一つではありません。
今ブログを「読んでいる」あなたは内的にどんな行動をしていますか?
言葉でも同じことが言えます。

「嫌よ嫌よも好きのうち」や「ツンデレ」という表現があるように、言葉の持つ意味と話す人の意思は必ずしも一致しません。
つまり、内的行動を目から読み取れば、人物の感情の変化する過程や相手への気持ち、動作や言葉の裏づけが理解しやすくなります。
そのため、人物の動作や言葉に惑わされず物語を追うことができます。
「何か言いたそうな顔」「目は口ほどに物を言う」「熱のこもった視線」「刺すような視線」「目が輝く」「黄色い声援」「猫撫で声」など私たちは日常で無意識に感じています!
映画と言っても、人間ドラマが中心の会話劇やCGを使った視覚効果の多いエンタメなど様々なジャンルがあります。
ゾンビやモンスター相手の戦闘物など、見どころや視点が違います。今作のような日常会話劇や舞台演劇に対して、とても有効的な見方です。
そしてこの作品のお芝居の質が高い理由は、国を挙げて力が入ってる作品だからです。
『シェイクスピアの庭』監督がすごい
今作の監督・主演のケネス・ブラナーさんは、自身がシェイクスピア役を特殊メイクで演じています。
過去出演作はTENETやハリポタ2作目など。
北アイルランド出身でイギリス王立演劇学校(舞台芸術の職業訓練学校)を首席で卒業、ロイヤルシェイクスピアカンパニー(劇団)出身です。
シェイクスピア作品の舞台や映画の出演・演出・監督など経験も豊富の専門家のようなお方。
また、映画制作国がシェイクスピアの出身イングランド(現イギリス)で、歴史上世界で有名な自国の著名人の作品。大好きで専門的知識も経験も豊富な監督の作品ともなれば、相当作り込まれていると思います。
芝居の質が高い作品は人物の内的行動から観る
普段は無意識にやっていることを意識化して見ることで、特に人間ドラマ中心の会話劇の理解が深まります。この『シェイクスピアの庭』は芝居の質が高く内的行動がより顕著に表れています。
どうやって内的行動を感じ取るの?
文字で説明するなら「目を読み取る」外的行動で、「演繹する」「言外を感じ取る」内的行動でしょうか。
何度も言いますが、私たちは普段無意識に内的行動をやっています!
新作『KCIA 南山の部長たち』という実際にあった大統領暗殺事件が題材の韓国映画では主演イ・ビョンホンさん中心に物語が語られます。
感情を表に出さない役柄、政治の水面下のせめぎ合いの様子が多いので、予習をしても物語の把握が難しく感じました。
俳優の顔のアップが多い韓国映画の特徴から、同じ内的行動の観点で人物の状況を見失わず、作品を汲み取ることができました。
私が映画を観るときに、内的行動以外にやっていること↓

具体的な内的行動の内容や訓練法などは、ワークショップの内容なので載せられませんが、メソッド創始者の教本(日本語訳)はこちらです。
スタニスラフスキーの本